幻夜』(東野圭吾)を読み終えた。

作品のクオリティは『白夜行』同様、かなりのものだとは思った。
と同時に、実際にいる蠱惑(こわく)的な女性というのは、常にものすごい美女であるとは限らないよな、と思った。現実の世界では、それほどの美貌の持ち主でなくても、その人が持つ「何か」にすっかり騙されてしまう、というケースも案外多いというイメージがあるのだが、どうだろう?第一、異様なまでの美人だったら、大抵の男は緊張と同時に警戒を強めるのではないか(少なくとも僕はそうだ)。だからそうそう簡単には騙されない。しかし、なんだか親しみやすく、安心感をもたらす女性が相手であれば、ちょっとしたことでいとも簡単に騙されてしまうに違いないと想像する。

というわけで、私が作家なら、そういう「安心で安全なはずの女性が持つ怖さ」を描く小説を書くだろう。書きながらあまりのリアリティに恐怖で震えながら。