Austin(1962)を読みながら、とりとめもなく考えた:

・「あなたを愛しています」という言葉は、illocutionary act(=愛の告白)とperlocutionary act(=聞き手への心理的影響、およびその後の行動への影響)の両方が間違いなく関与するが、その比重のバランスが、発信した側と受け取り手の間で非常に食い違いが生じやすい(ような気がする)。

・高校生ぐらいの頃、「愛している」という言葉の意味は「愛している」という言葉を口にすることそのものだな、などと考えたことがあった。当時から言葉に対してはひねくれたアプローチをするのが好きだった。

・通っていた高校の中では、英語(特に文法)はよくできると認知されていたので、当時親しかった友人から「教えてくれ」と請われたことがあった。自分にとってこれほど面白く、かつ分かりやすい説明はないと思いながら意気揚々と教えたつもりだったが、彼は「お前の説明はようわからん」と言っただけであった。(以後、彼は僕に二度と「説明」は求めず、ノートのコピーだけを要求してくるようになった)

・要するに、私は「天然系の文法好き」だったのである。自分でそのことに気付いたのはそこから約5年ほど後のことだった。

・「ご専門は何ですか?」と聞かれたとき、「言語学です」よりも「(英)文法です」と言う方が一般的に通りは良いようだ。