文献に関しては、かなり「浮気性」なのだけれど(笑)、
これから10年経っても自分の中でその価値は揺るがず、絶対に手放さすこともないだろうと思われる論文はいくつかある。
流石に海外の研究者によるものが殆どだが、日本人研究者によるものももちろんある。

その中でも特に大切にしている二つの論文がある。
K. Inoue先生とN. Akatsuka先生という、「超」大御所の先生方(二人とも女性)による論文である。
どちらも70年代後半に世に出たもの。
musicienがこだわって研究している現象について非常に重要な知見を提出した論文である(前者は日本語について、後者は英語について)。
特筆すべきは、もう30年近く経つのに、これらの論文の価値が全く薄れていないということ。
逆に言えば、30年近く、当該現象の研究があまり芳しく進んでいないということでもある。

どちらももう数え切れないくらい読み返したのだが、未だに再発見があるから不思議だ。
今日もAkatsuka氏の方を読んでいて、かなりの発見があった。正確に言うと、未だに正確に理解していない箇所があったことに気づいた。ひさびさに、前進できた気がした。

ほんの10ページにも満たない論文なのだが、読めば読むほど、まだ掴み切っていない重大な何かが残っている気がしてくる。

そんな論文を何度も読んでいると、バッハの「ゴールドベルク変奏曲」とかサティの「ジムノペディ」とかを思い出す。
シンプルな構成でありながら、果てることのない壮大な宇宙を思わせる作品。


・・・というわけで(?)、明日も頑張るのだ。