羊をめぐる冒険』(村上春樹)をエンジョイ中。

 塔からは荘重な屋根つきの渡り廊下が出ていて、それは一直線に別館へとつながっていた。この別館というのがまた奇妙な代物ではあったが、少くともそこには一貫したテーマが感じられた。「思想の相反性」とでもいうべきものである。一頭の驢馬が左右に同量のかいばを置かれて、どちらから食べ始めればいいのかを決めかねたまま餓死しつつあるといった類いの哀しみがそこには漂っていた。

(上巻p.112-113より;「かいば」にはオリジナルでは傍点がほどこされている)

村上春樹の、こういうトンデモない比喩が結構好きだ。