小さい頃から読書好きで、僕よりも遥かに多くの本を読んでいるはずの恋人が、川端康成に限っては一冊も読んだことがないとわかって驚いた。僕でも「伊豆の踊子」は読んでいる。

「道がつづら折りになって、いよいよ天城峠に近づいたと思う頃、雨脚が杉の密林を白く染めながら、すさまじい早さで麓から私を追って来た。」

この冒頭部は昔から何故か好きで、完全に諳んじている。