その某氏、どうやら「アリーmyラブ」をレンタルして観はじめたようで。

それを聞いてちょっと思い出したのが、リチャード・フィッシュがファーストシーズンでやたら連発していた「Bygones.」というセリフ。

字幕では大方の場合「前向きに」となっている。初めて見た時はなるほど、という感じがした。
分かる人には解説するまでもないことだが、これは「Let bygones be bygones.(過ぎたことは水に流せ)」という言い回しが前提にあって、これを略して言っていると考えられる。


まあそれはそうとして、この「前向きに」という字幕、なかなかなものだなと感心させられる(素人判断だけどw)。


「忘れて」「勘弁!」とかでもよさそうな気もするのだが、そうすると「二人の間に起こったことを二人で」というニュアンスを取りこぼす(Cf.手元のCOBUILDの定義:if two people let bygones be bygones, they decide to forget about unpleasant things that have happened between them in the past)。どうも一方的に自分が悪いことを認めているように響いてしまう。
加えて、単なるニュアンスの問題だけではなく、相手に非があって自分が「忘れる」「許す」側の場合、別のセリフにしなくてはならない。英語では同じ「bygones」なのに、である。これは明らかにまずい。


「忘れよう」だと、どうか。
まあ「いっしょに忘れよう」という感じにはなるが、「Let's forget about it」と何が違うのか、ということになって「bygones」が独特のセリフとして際立たせられない。


しかし、だからといってbygonesに対して「水に流そう」は長すぎる。(おまけにフィッシュは早口)


・・・と、このようなことを考えると、「前向きに」というのは実に巧妙だなと思えてくるのである。


きっぱりと自分の(あるいは)非は認めつつも、むやみにへりくだらずに(責めずに)さっと次のことに注意を持っていこう、というリチャード・フィッシュのキャラを見事に表す言葉だと思われてくるのである。


その人のキャラクタを象徴するような口癖やセリフというのは、ああいうドラマではかなり重要になってくる。その意味でも、「前向きに」には拍手を送りたい(大袈裟かw)