天才の重要な役割の一つに、凡才を啓発する、というのがあるかもしれない。
凡才を「育てる」とは違う。何も教えはしないが、ただ、自らの仕事ぶりだけで、凡才に途方もない刺激と影響を与えるというものだ。

というのも、ここ数日で、Leonard Talmy氏が提案しているある重要なアイデアによって大いに啓発された。目を開かされたと言ってもいいかもしれない。自分が今までいろいろ考え悩んでいたことに、一つの明確な区切りをつけるきっかけになった。モヤモヤとあった霧が晴れた。道なき道を歩いていたのが、気が付けば一本のまっすぐな道が出来上がっていた。そんな感じだ。

正直、これがそのまま論文に直結するとは思えないし、誰も共感してくれないかもしれない。しかし、少なくとも自分で自分に納得しきれないという状態は切り抜けた。

他の研究者はどうか知らないが、少なくとも僕にとっての一番の難敵は自分自身だ。誰よりも説き伏せにくい相手だと思っている。その意味で、今回の出来事は大きな意味を持っているかもしれない。とりあえず、今は自分の考え方の大枠については何の疑念も持っていない。