Ryuichi Sakamoto PLAYING THE PIANO/05」に行った。
フェスティバルホールは今年三回目だけれど、結論から言って、締め括りに相応しい珠玉の二時間だった。
座席は、先行抽選予約でゲットした甲斐あって、前から7列目のちょうど真ん中辺り。音響的にも視覚的にもパーフェクトだった。
エコ・コンシャスなツアーだそうで、電力はすべて化石燃料に頼らない自然の電力(水力・風力etc.)のみを使用しているらしい。
しかし、まあ、正直に言って、そういうことよりもやはりとにかく音楽がよかった。どういう風に良かったかは幾ら文章化しても不毛なのは目に見えているので、ただ、事実描写とそれへの自分の印象を書くことにとどめておきたい。


Asience
Amore
Fountain
Undercooled
Seven Samurai
Chanson
Bibo no Aozora
Energy Flow
Shinig Boy & Litte Randy
A Flower Is Not A Flower
Merry Christmas Mr. Lawrence
The Last Emperor
The Sheltering Sky
Tibetan Dance(*)
Riot in Lagos(*)
+33(*)
Happyend(*)
Thousand Knives(*)
Aqua
Tamago 2004
Dear Liz

というプログラムだった。出だしの数曲は読めないこともなかったが、驚いたのが中盤と終盤。中盤は、「Merry Christmas Mr. Lawrence」「The Last Emperor」と続いたあとに「The Sheltering Sky」という、あり得ないほど贅沢なラインナップ。実はラストエンペラーの直後に坂本氏がマイクを引き寄せてMCに入ろうとした矢先、だれかが、「教授、シェルタリングスカイが聴きたいです!お願いします!!」とリクエストした。すると教授、黙ってマイクを戻して、間髪いれず弾き始めたのだ。これは個人的に嬉しいハプニングだった。文字通り我を忘れて聴き入る自分がいた。
終盤は、もう一台のピアノの自動演奏を使って「バーチャル坂本」との共演だった(*のつけてある曲がそれ)。「Tibetan Dance」や「Happyend」「Thousand Knives」などの往年の傑作の間に、真新しい「+33」が入ってこれるあたりが、サカモトミュージックの超時代性を端的に示していると思った。で、その「+33」、生で聴くと想像を遥かに超えた迫力で、圧倒されてしまった。50歳を越えてなお、こういう新しい可能性に意欲的であることに脱帽してしまう。
ちなみに、「Happyend」以降はアンコールでやった曲。アンコールはなんと四回も(!)。おそらく、ツアーの中でもかなり乗っていた日だったのだろう。幸運だった。「Dear Liz」で「ポンっ」と終わる辺りがいかにも坂本龍一という感じだった。
MCの途中で、大声で話しかけるファンが結構多いことにも驚いた。先ほどの「シェルタリングスカイ」君以外にも、お茶を飲んでいるときに「おいしい?!」と話しかけるおねえさんがいたし、アンコールの曲を教授が思案している最中など、いくつもの声が「1919!」「東風!」など、自分勝手なリクエストを叫んでいた。(このラインナップの中で「1919」を弾くのは幾らなんでも妙じゃないか?笑)
坂本龍一のピアノ、ということであれば皆、MCも含めてきわめて大人しく静かに聞き入っているものだとどこかで思い込んでいた僕はかなり(いい意味で)カルチャーショックを受けた。アンコール終了時には、前に座っていた女性がプレゼントを抱えて舞台袖までダッシュしていたし・・・(結局渡せていなかったけれど、あのプレゼントはどうしたのだろうか・・・)

・・・と、そんなこんなで、この上なく思い出深いコンサートになった。いろいろと書いてしまったけれど、僕としては「Merry Christmas Mr. Lawrence」(史上初、出だしのアレンジが違っていた!)と「Bibo no Aozora」と「The Sheltering Sky」が生で聴けただけで最高に幸せだったわけで、あとの全てはあまりにも贅沢に感じられたぐらい。

ちなみに、生で聴くことの効用は、その時に感動できるということもあるけれど、一度生で聴くと、同じ曲をCDなどで聴いても以前より良いように聴こえてくるというところにもあるのかなと思った。そう感じるのは僕だけなのかもしれないけれど。