中村由利子という音楽家を知った。Another Springという曲に、感動しすぎて思わず笑ってしまった。で、太宰治が「富嶽百景」の中で描いた「人は完全なる頼もしさに接した時に、どうしようもなくゲラゲラと笑ってしまう」という類の笑いを思い出した。「もし君が恋人と一緒にいて、突然その恋人が笑いだしても、君は恋人の非礼を咎めてはならぬ」みたいな感じのことまで書いてあったような気がする。そこのところを読んで、太宰は天才以外の何物でもないと若き日の僕は確信したのだった。この一節を書いたというだけで、すでに歴史に名を刻む作家を言って差し支えないとさえ。なぜか猛烈にそう思った。もう10年以上も昔の話。


・それが背景にあるからなのかどうかはわからないが、今でも、一緒にいるだけでこの「どうしようもない笑い」がこみ上げてくる人は絶対に自分を幸せにしてくれるのだと固く信じて揺るがない。そしてそんな人はきっと生涯にそんなにたくさん巡り会わない。人生は一度。一期一会。笑いとともに生きることの尊さ。

・中高時代に幾度となくお世話になった国語のN先生。(中高時代の大半の先生に関してそうであるように)具体的に授業で教わったことはほとんど何も覚えていないけれど、雑談の中でこの「富嶽百景」という名作の存在を教えてくれたことだけは、たぶん生涯忘れないだろうな。


・ストレスが溜まりすぎて、何かのラインを通り越したに違いない。普段は絶対に書かない種類の文章を書いている。