母が買った、山下達郎の新作「SONORITE」を聴いた。絶句した。痺れてしばらく動けなくなった。そして、そのあと、思わずニヤリと笑ってしまった。やっていやがる、と思った。
彼は掛け値なしの天才シンガー。たとえば「FOREVER MINE」なんて聴いてしまうと、他の若手ミュージシャンのバラードなんてただの子供騙しに思える。決定的に宿命的にクオリティが高い。高すぎるがゆえに、大衆化はしにくいのだろう。その意味では、作曲の世界での坂本龍一にも似ている。坂本氏が一度だけ「大衆化」した曲「energy flow」は、こだわったファンにしてみれば、少し物足りない感じのする曲だ。「大衆的」になる音楽は、程よく手頃なレベルでなくてはならない、というのが持論。どっちがいいとかではなく、ただそれが事実だと思うだけだけれど。(でも僕は個人的に「天才」の徹底的に質の高い作品が好きだけれど笑)

それで思い出した。今からウン年前、大学入試の後期日程を受けたとき、小論文のテーマのひとつが、「Localな音楽とPopularな音楽」みたいなものだった。僕は高校二年で坂本氏の音楽を知ってから常々考えていたことだったから、何の迷いもなくスイスイと書いたなぁ。そのお陰で受かったんだろうなと今でも思う。